残業代問題・解雇問題・労働災害問題・使用者責任問題などの、「会社(使用者側)」の労働問題・労働者トラブルの解決をサポートする弁護士事務所です。
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会社・使用者のための、法律問題に対する理解と対応策

今般、西村あさひ法律事務所に所属する弁護士が、同事務所に対し、無期雇用転換を求めた訴訟が話題となりました。同訴訟では、同弁護士の労働者性が問題となり、結果として、同弁護士の労働者性が否定されました。
そこで、労働者性に関し、見直しを行うべく、以下のとおり、まとめました。

1 労災保険法上の労働者は、労基法上の労働者と同一(最判平成8年11月28日)。
  労災保険法以外の労基法の附属法及び関連法上の労働者は、労基法上の労働者と同一とされます。
  労働契約法上の労働者は、労基法上の労働者と基本的に同一。
2 個別的労働関係における労働者性
  労基法上の労働者(労基法9条)とは、①労務提供の形態が指揮監督下の労働であり、②労務の対価としての報酬の受領
 があると評価できるか否か、により判断されます。
  判断要素としては、
 ⅰ)仕事の依頼、業務従事の指示等の諾否の自由
 ⅱ)業務遂行上の指揮監督
 ⅲ)勤務場所及び勤務時間に関する拘束性
 ⅳ)労務提供の代替性
 ⅴ)報酬の算定及び支払方法、があります。
  限界事例における判断を補強する要素として、
 ⅵ)事業者性
 ⅶ)専属性
 ⅷ)当事者の認識を推認させる事情
 があります。
  最判平成8年11月28日は、労働者性を否定しました。
  (同判例の事実関係)
  ・継続的運送契約は、書面ではなく、口頭。
  ・使用者の担当者から、同使用者の従業員ではないこと、運送途中での交通事故については、同使用者は、責任を負わない
   ので、任意保険に加入すること。
  ・運送品を破損させた場合、弁償させること。
  ・始業時間及び終業時間の定めなし。
  ・報酬は出来高制。
  ・トラックの購入代金、ガソリン代、修理費、高速代等は自己負担。
  ・源泉徴収、社会保険及び雇用保険の保険料の控除なし。
3 集団的労働関係における労働者性
  労働組合法上の労働者概念は、労基法上の労働者概念より広いです。
  判断要素としては、
 ①対象者の組織への組入れの有無
 ②使用者による契約内容の一方的決定
 ③報酬の労務対価性
 ④対象者が基本的に使用者からの個々の仕事の依頼に応ずべき関係にあったこと
 ⑤使用者の指揮命令下での労務提供、一定の時間的場所的拘束の存在
 ⑥独自に事業者としての活動を行うことの困難性
 があります。

労働者に能力不足がある場合、労働者の労働の提供には、不完全履行があります。
もっとも、同不完全履行があるからといって、直ちに、労働者を解雇することができる訳ではありません。
労働者を解雇する場合、解雇権濫用法理が適用され、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、解雇は、その権利を濫用したものとして、無効となります(労契法16)。
では、労働者の能力不足を理由とする解雇は、具体的にどのような場合、認められるのでしょうか。

ブルームバーグ・エル・ピー事件(東京高判平成25年4月24日)は、就業規則の「社員の自己の職責を果たす能力もしくは能率が著しく低下しており改善の見込みがないと判断される場合」という解雇事由の解釈に関し、
① 「当該労働契約上、当該労働者に求められている職務能力の内容を検討した上で、当該職務能力の低下が、当該労働契約の継続を期待することができない程に重大なものであるか否か」
② 「使用者側が当該労働者に改善矯正を促し、努力反省の機会を与えたのに改善がされなかったか否か」
③ 「今後の指導による改善可能性の見込みの有無」
等の事情を総合考慮して決すべき、だと判示しました。同判事示は、具体的にどのような場合、労働者の能力不足を理由とする解雇が認められるかの参考になるものです。
※ 結論として、解雇は無効とされました。
また、セガ・エンタープライゼス事件(東京地決平成11年10月15日)は、就業規則の「労働能率が劣り、向上の見込みがない」という解雇事由の解釈につき、
「平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならないというべきである」と判示した上で、
対象となる労働者の人事評価が下位10%という点については、絶対評価ではなく相対評価であること、体系的な教育、指導を実施することで、労働能率の向上を図る余地があるというべきこと等を考慮し、
解雇を無効としました。
他方、日本ヒューレット・パッカード事件(東京高判平成25年3月21日)は、日本5年にわたる指導を行っても、全く改善が見られなかった事案において、解雇を有効としました。

労働者の能力不足を理由とする解雇については、職務内容、地位等が明確に特定されて中途採用された労働者(職種限定を超えるような立場で中途採用されたことが必要。)なのか、そうでないかにより、労働者の能力不足を理由とする解雇が認め易いかに関し、強弱があります。
前者の場合、同解雇は認められ易いといえます。
ドイツ証券事件(東京地判平成28年6月1日)は、上級の専門職として、特定の職種及び部門のために即戦力として、好待遇で中途採用された労働者の能力不足を理由とした解雇に関し、期待された能力を有していなかった場合には配転や手当の引き下げといった解雇回避措置をとらなくても、解雇は有効であるとしました。
因みに、ブルームバーグ・エル・ピー事件は、「労働者の採用選考上……格別の基準を設定したり、使用期間中……格別の審査・指導等の対応を行う等の措置は講じていないと認められること」から「社会通念上一般的に中途採用の記者職種限定の従業員に求められると想定される職務能力との対比において、……労働契約上、これを量的に越え又はこれと質的に異なる職務能力が求められているとまでは認められない。」としていることから、後者に当たると思料されます。セガ・エンタープライゼス事件も事案から後者に当たると思料されます。

以上からすると、労働者の能力不足を理由とする解雇を行う場合には、慎重な判断が必要になりますので、ご注意下さい。





1 問題の所在
事業者及び事業者団体が、商品やサービスを消費者に認識してもらい、購入や申込みに繋げるためには、広告が極めて重要になります。
しかし、広告の内容が虚偽であったり、誇大であったりすると、一般消費者は、冷静な判断をすることができず、品質の低い商品や購入の必要性のない商品を購入するなどして、消費者にとって、実は不利益な事態となります。
このような不利益な事態を防止し、一般消費者が適切に商品・サービスを選択することができる環境を実現しようとするのが景品表示法です。

2 景品表示法の概要
⑴ 景品表示法は、①不当な表示と②不当な景品類の2つを規制しています。
⑵ ①不当な表示について
ア 不当な表示は、ⅰ)優良誤認表示、ⅱ)有利誤認表示及びⅲ)指定告示に係る表示の3つを規制しています。
イ ⅰ)優良誤認表示とは、商品・サービスの品質等に関して、実際のものや事実に相違して、競争事業者のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認させる表示を指します。
  ex)特定のサプリメントに関し、合理的な根拠がないにも係わらず、飲めば痩せられるなどと広告すること 実際は異なるにも係わらず、他者の製品より品質が良い旨謳うこと
ウ ⅱ)有利誤認表示とは、商品・サービスの価格等の取引条件に関し、実際のものや、事実に相違して、競争事業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認させる表示を指します。
  ex)1月間、手数料の割引キャンペーンを実施するとしながら、恒常的に、同キャンペーンを実施し続けること 通常価格100円のところ50円で販売と謳いながら通常価格の設定がない場合(二重価格表示)
エ ⅲ)指定告示とは、特定の業種や事項に関し、内閣総理大臣が定め、告示した不当な表示を指します。 ※上記イウと異なり、「著しく」との要件不要(×)。
  ex)清涼飲料水等における無果汁の表示 商品の原産国に関する不当な表示 一般消費者からして、事業者の広告であると判別するこが困難な表示(ステルスマーケティング)
    商品・サービスが実際には購入できないのに、購入できるかのような認識を一般消費者に与えるおそれのある不当表示(おとり広告)
オ 上記アイに関し、違反があれば、措置命令、公表、指導及び課徴金納付命令といった行政上の措置、罰則といった刑事上の措置、差止請求及び返金請求といった民事上の措置がとられることがあります。
 上記ウに関し、違反があれば、行政上の措置(課徴金納付命令は含まれません。)及び返金請求といった民事上の措置(差止請求は含まれません。)がとられることがあります。
⑵ ②不当な景品類について
ア 不当な景品類とは、顧客を誘引するために手段として自己の供給する商品やサービスに付随して、消費者に不当に経済上の利益(おまけ)を提供することを指します。
  ex)商品を購入した場合に、抽選で、ハワイ旅行をプレゼントすること 
  不当な景品類は、経済上の利益(おまけ)によって、消費者が、冷静な判断力を失い、必要のないものを購入してしまうのを防止する点に目的があります。
  なお、単なる値引きやアフターサービスは、不当な景品類として規制の対象とはなりません。ただ、単なる値引きと不当な景品類との限界には難しい点があります。
イ 不当な景品類に違反があれば、措置命令、公表及び指導といった行政上の措置(課徴金納付命令は含まれません。)、返金請求といった民事上の措置(差止請求は含まれません。)がとられることがあります。

3 以上のように、広告等に関し、不当な表示や不当な景品類の規制の違反があれば、場合によっては、公表により、事業者名
が社会に知られることになり、事業者のイメージにとって、大きなダメージとなりますので、注意が必要です。
  また、景品表示法は、一般消費者向けに表示等を行う事業者に対し、管理上の措置を講ずることを求めています。
  管理上の措置や広告の内容に関し、疑問があれば、ご相談下さい。
                                                              



1 整理解雇とは、経営上の理由に基づく解雇をいいます。

2 整理解雇法理
  整理解雇も解雇であることから、解雇権濫用法理(労組法16条)の適用を受けます。
  特に、整理解雇の場合には、以下の整理解雇の4要件(要素)が考慮されます(東洋酸素事件・東京高判昭和54年10月29日)。   
  ① 人員削減の必要性
  ② 解雇回避努力
  ③ 人選の合理性
  ④ 手続の妥当性
  ①~③は、使用者側が主張立証責任を負い、④は、労働者側が主張立証責任を負うというのが、一般的な理解です。
  整理解雇法理は、危機回避型のみならず戦略的合理化型及び会社再建型の整理解雇にも適用されます。清算型にも適用されるかは争いがあります。

3 ① 人員削減の必要性
  倒産必至の状況までは必要ではなく、使用者の判断を尊重する傾向にあります。
  ∵ 裁判所が高度の経営判断に介入することには限界があるため。
  会社再建型の事案では、更生計画を確実に遂行するために必要な諸施策として合理的であるかという観点から判断されるべきとされ、事後的な事情による同必要性の軽減は考慮されません。

4 ② 解雇回避努力義務
  一般的には、希望退職者募集を実施していないと、同要件(要素)を満たしていないと判断される可能性が高いとされます。
  東洋酸素事件では、希望退職募集を実施していないにも係わらず、同要件(要素)を満たすと判断されました。同判断には、求人に恵まれた転職事情から、希望退職者募集を実施すると、人材流出の危険があった
 ため、希望退職者の募集が実施できない、という特殊事情があったともいわれています。
  原則として、勤務地限定正社員、職種限定正社員といったいわゆる限定正社員に対して、使用者は、その限定された勤務地や職種の範囲でしか、同回避の可能性を検討する必要はありません。

5 ③ 人選の合理性
  差別がなく、勤務成績、勤務期間、労働者の生活状態等の使用者の恣意が排除されるような客観的基準であり、かつ、その基準の適用が公正であることを要します。
  直近の時期に病気や休職による欠勤及び欠勤期間がある者を解雇対象とする人選基準の合理性を認めた裁判例もあります(日本航空事件・大阪高判平成28年3月24日)。

6 ④ 手続の妥当性
  労働組合との協議の有無に加え、労働者に対し、納得が得られるような説明協議を行うことも加味されます。
  東洋酸素事件では、労働組合との協議はなかったが、同手続の妥当性の要件(要素)が満たされるとされました。
  ∵協議がない点は、「いささか性急かつ強引であった感がないではない」としつつ、解雇協議に関する労働協約がないこと、労働組合に対する整理解雇に係る部門の廃止の事前告知があったため。

                                                                                              以 上
  
  


0 はじめに
  タイトルに関する問題に関しては、一見単純そうですが、複数の争点を含む意外に厄介な問題です。
  自身なりの解決策を述べさせて頂きます。※ 正解がないテーマと思料されるため、参考までに、ご
  確認下さい。
1 Q
  欠勤を繰り返す従業員が、メンタルヘルスに罹患し、●月間の療養を要する旨記載された診断書及び
 退職届を送付してきました。退職届には、●月間の休職後、退職する旨記載されています。復職するこ
 とが期待できない場合に復職を認める必要があるのでしょうか。
2 A
 ⑴ 休職制度
  ア 確かに、休職制度は、一般的に解雇を一定期間猶予し、解雇から従業員を守る制度だと説明され
   ることがあり、復職が期待できない以上、休職は与えないという措置も考えられます。
    他方で、休職は、法律上の制度ではなく、休職制度の設計・運用は、就業規則等の規定による以
   上、就業規則等の趣旨、規定等によっては、一概に、復職が期待できない以上、休職は与えないと
   考えることはできません。
    そこで、まずは、Qの事案を防止する可能性を高めたい場合には、就業規則等に、復職を前提と
   しない休職は認めない旨規定すべきだと思います。ただし、使用者都合(原因)による休職には注
   意が必要です。
  イ 休職の原因
    業務に起因する疾病なのか私傷病なのかで取り扱いが異なります。
    後者の場合、就業規則等で、休職の場合、無給とできても、前者の場合、危険負担により、使用
   者が、従業員の給与相当額を負担することになり兼ねません。
    そのため、Qの事案では、休職が、業務に起因する疾病なのか私傷病なのかを分析する必要があ
   ります。
 ⑵ 日本ヒューレット・パッカード事件(最判平成24年4月27日)(以下「本件事件」といいます。)の要旨
   精神疾患によって欠勤を継続している従業員に対し、欠勤に正当な理由なく無断でされたものとし
  て諭旨解雇した事案において、健康診断を実施するなどした上で、休職等の処分を検討し、その後の
  経過を見るなどの対応を採るべき旨言及し、諭旨退職を無効としました。本件事件は、普通解雇の事
  案でも参考になる旨言及する文献もあります。
 ⑶ Qの事案
   Qの事案は単なる退職届の提出ではありません。休職を条件とした退職届です。そのため、従業員
  において、休職が認められないのであれば、退職を撤回するという可能性があります。使用者におい
  ては、従業員の意思を慎重に判断する必要があります。
 ⑷ まとめ
  ・ 休職制度の有無、趣旨、内容等を確認しましょう。
  ・ 休職が業務に起因する疾病なのか私傷病なのか確認しましょう。
  ・ 休職を条件とした退職届であることを前提に慎重に対応しましょう。
  ・ メンタルヘルスの従業員に対しては、本件事件を踏まえ、慎重に対応しましょう。

                                            以 上
  
 

かつて回転寿司チェーン店を展開する会社の社長が、かつて在籍していた同じ回転寿司チェーン店の会社の営業秘密を不正に取得したとして問題となった事案がありました。
営業秘密は、会社にとって重要であり、ライバル社に流失すると、取引に利用され、損害を被ることになり兼ねません。
特に、退職した従業員がライバル社に転職したり、独立する際、顧客名簿、仕入れ値、規格書等の秘密情報を持ち出す事例は、
多いものです。
同事例は、不正競争防止法上の営業秘密に係る不正行為に当たる可能性があります。ただ、同不正行為に当たるための要件は、
厳格であり、会社としては、秘密情報の管理を徹底しておかなければなりません。秘密情報の管理にはコツがいるので、不安な
場合は、専門家のアドバイスを受けた方が良いです。
以下、営業秘密に係る不正行為に関し、まとめたので、参考にして下さい。
営業秘密に係る不正行為(不正競争防止法2条1項4号~10号)の類型 →刑事罰 有(21条1項)
  誰から 誰が 何を どうした 主観 適用除外①取得時の善意・無重過失→悪意・重過失に転じても取引によって取得した権原の範囲内での使用・開示の適用除外(19条1項6号) 適用除外②15条1項(消滅時効・除斥期間)の経過後の物の譲渡等(19条1項7号)
4号前段 営業秘密保有者 取得者 営業秘密 不正取得   有 無
4号後段 営業秘密保有者 取得者 不正取得した営業秘密 ・使用
・開示
  有 無
5号 営業秘密保有者からの取得者 転得者 取得者によって不正取得された営業秘密 ・取得
・使用
・開示
・悪意
・重過失
有 無
6号 営業秘密保有者からの取得者 転得者 取得者によって不正取得された営業秘密を(善意・無過失で)取得した後 ・使用
・開示
・悪意
・重過失
有 無
7号 営業秘密保有者 取得者 正当に示された営業秘密 ・使用
・開示
図利加害目的 有 無
8号 営業秘密保有からの正当に示された営業秘密の取得者 転得者 不正に開示された営業秘密 ・取得
・使用
・開示
・悪意
・重過失
有 無
9号 営業秘密保有からの正当に示された営業秘密の取得者 転得者 不正に開示された営業秘密を(善意・無過失で)取得した後 ・使用
・開示
・悪意
・重過失
有 無
10号 生産者 ・取得者
・転得者
※ 取得後悪意・重過失になった者を除く。∵6,9号に相当する規定なし。
営業秘密のうち、技術上の秘密の不正使用により生じた(ex)製造された)物 譲渡等 ・悪意
・重過失
無 有
※ 営業秘密:①秘密管理性②有用性③非公知性

 良い人材を確保したい等の理由で、定額残業手当の導入を検討している事業者も少なくないかと思います。

 そこで、以下、定額残業手当を導入する場合の留意点を簡単に解説いたします。

 まず、基本給等の一部又は手当が残業代に相当する賃金であることを明示し、それ以外の賃金と明確に区分されていなければなりません(明確区分性)(小里機材事件(最判昭和63.7.14))。

 また、テックジャパン事件(最判平成24.3.8)は、月により時間外労働時間が大きく変動しているにも係わらず、基本給が増額されることがない場合、明確区分性を否定したことから、

定額残業手当と実際の時間外労働時間数に基づいて算出した額との間に、差額が発生した場合、労働者に対し、同差額を支払うことが重要になってきます。

 さらに、95時間分の残業を前提とした定額残業手当が、安全配慮義務に違反し、公序良俗に反する恐れがあるとした裁判例(ザ・ウインザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌高裁平成24.1.19))

があることから、定額残業手当に相当する時間外労働時間の設定が、長くならないように注意する必要があります。

 

 以上の留意点等を外し、実際に訴訟等で、定額残業手当の有効性が否定された場合、残業代の算定の基礎となる額に、定額残業手当が含まれてしまうなど弊害が大きいので、

定額残業手当の導入を検討する事業者は、定額残業手当の社内規定を慎重に整備しなければならないでしょう。


 当該事件の当てはめを分析すると、定年後再雇用において、賃金が下がることにつき、不合理性があるかどうかを、

ⅰ) 一般的にみて妥当かどうか

ⅱ) 当事者の業種全体の傾向からみて妥当かどうか

ⅲ) 減額幅、会社の収支、賃金の差額等の個別の当事者の事情

の3つの視点から判断しているといえる。


1 前提

  フランチャイズ契約とは、

 特定の商品・サービスの提供につき独占的権利を有する親企業

 (以下「フランチャイザー」といいます。)が、加盟店(以下

 「フランチャイジー」といいます。)に対し、フランチャイザ

 ーのブランド等を使用して営業する権利等を与え、かつ、営業

 等の指導もすることを約し、これに対し、フランチャイジーが

 ロイヤリティを支払うことを約する契約をいいます。

  フランチャイズ契約では、フランチャイジーは、フランチャ

 イザーから独立した事業者であり、フランチャイザーと対等の

 関係にあります。

 

2 某コンビニの従業員が労災事故で亡くなった事案で、従業員

 の遺族と某コンビニ(フランチャイザー)との間に、和解が成

 立した、というニュースがありました。

  当該従業員と雇用関係にあるのは、フランチャイジーであっ

 てフランチャイザーではないことから、当該従業員の遺族がフ

 ランチャイザーに対し、法的責任を追及する根拠は、使用者責

 任(民法715条1項)等であると思われます。

  そこで、以下、実際にフランチャイズ契約において、フラン

 チャイザーに使用者責任が発生するのか検討したいと思います。

 

3 使用者責任が、発生するには、

 ①被用者に一般不法行為責任があること

 ②ある事業につき

 ③使用者と被用者に実質的指揮監督関係があること

 ④②の事業の執行につき、

 ⑤第三者に損害を加えたこと

 が要件となります。

  この点、フランチャイズ契約では、フランチャイジーは、フ

 ランチャイザーから独立した事業者であり、フランチャイザー

 と対等の関係にあることからすると、フランチャイザーとフラ

 ンチャイジー間に、上下関係は観念し難く、③使用者と被用者

 に実質的指揮監督関係がある、とはいい難いと思われます。

  また、④事業に執行とは、使用者の事業の範囲に属すること

 が前提となります。使用者であるフランチャイザーは、フラン

 チャイジーの営業等の指導を行う立場にあり、その立場を超え

 て、フランチャイジーの労務管理につき指揮監督する立場にあ

 るとは言い難いです。そのため、④事業に執行の要件も満たし

 難いと思われます。

  結論からすると、実際にフランチャイズ契約において、フラ

 ンチャイザーに使用者責任は、発生し難いと思われます。

  ただ、労働問題は、実質判断なので、フランチャイザーの労

 災事故発生への寄与度、フランチャイザーの、フランチャイジ

 ーにおける労働環境等の認識の程度によっては、フランチャイ

 ザーに使用者責任が発生するケースもあるかと思います。

  


 会社では、従業員を採用する場合に、試用期間を設け、

その適格性を判断するケースがあります。

 

 試用期間ですが、その法的性質は、会社が試用期間中

の従業員の身元調査の補充や使用期間中の勤務態度等に

より、従業員の職務についての適格性を判断し、従業員

に適格性がないと判断された場合に、本採用を拒否する

ことができる解約権付きの労働契約です。

 したがって、本採用の拒否は、客観的に合理的な理由

が存在し、社会通念上相当と是認されうる場合に許され

ます。単なる勤務成績不良や能力不足のみでは、本採用

拒否は難しい、といえます。また、経歴詐称も程度によ

っては、本採用の拒否が許されない場合があります。

 

 会社としては、適格性判断に際し、複数の事情を総合

的に判断すべきです。また、従業員に求める適格性のレ

ベルを数値化する等の仕組み作りをして、対策をとるべ

きでしょう。








1 背景事情

  昨今、日本は、超高齢化社会を迎え、平成27年、総人口に占める高齢者[注:65歳以上の者]の割合は、26.8%も占めます。

  また、平成24年度の調査によると、家族の介護・看護を理由とする離職者数は、直近1年間で約10万人になります。それゆえ、介

 護離職は、重大な社会問題となっています。

  この問題は、会社にとっても見過ごすことはできません。

  すなわち、上記総人口に占める高齢者の割合及び介護離職者数を見ると、

 かなりの確率で、従業員が、その家族の介護・看護の問題に直面し、会社を離職する可能性があるといえます。離職の意思を示した従業員が

 会社にとって欠かすことのできない人材である場合、会社に発生する損害は計り知れません(以下「介護離職のリスク」といいます。)。

 

2 では、会社は、介護離職のリスクにどのように対応すればいいのでしょうか。

 ⑴ 第一に、会社は、従業員に対し、介護・看護につき、理解していることを示すべきです。

   すなわち、会社は、介護離職のリスクにつき、社会問題になっていることを理解していることを従業員に対し示し、従業員に介護・看護

  の問題が生じた場合、従業員が会社に気軽に相談できるような環境を整備すべきです。

  真面目な従業員ほど、会社に迷惑をかけたくない、という気持ちが強い傾向にあるので、介護・看護の問題につき、気軽に相談できる環境

  を整備することは極めて重要です。

 ⑵ 第二に、会社は、介護をサポートする制度について理解すべきです。

   介護については、公的介護保険制度が存在し、要介護者は、介護保険サービスを受けることができます。具体的にいうと、要介護者は、

  要介護認定を受けた後、ケアプランに従い、介護保険サービスを受けることができます。

   また、従業員には、介護体制を構築するために、合計93日の介護休暇を取得することができる等が認められています。

   なお、従業員は、半日単位の介護休暇を取得することができる場合もあります。

 ⑶ 以上の点を踏まえ、会社は、介護離職のリスクに対応すべきです。

 

3 当事務所では、会社の介護離職のリスク対策につき、取り扱っていますので、お気軽にお問合せ下さい。




 労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。

 このような労働時間の定義からすると、仮眠時間であっても、労働者が、使用者の指揮命令下に置かれていた場合、

労働時間に当たります。

 例えば、宿直業務で、仮眠時間であっても、仮眠室における待機、電話対応等が義務付けられている場合、労働時間

に当たり得ます。

 

 仮眠時間が労働時間に当たる場合、使用者には、当該時間につき、労働者に対する賃金の支払義務、時間外割増賃金、

深夜割増賃金の支払義務が発生します。

 そこで、使用者は、仮眠時間については、必要性がないのであれば、労働者の義務をなくしていくべきでしょう。

 

 単に、就業規則等の規律により、仮眠時間における義務が規定されていないからといって安心はできません。

 使用者におかれましては、仮眠時間が本当に休憩時間なのかどうかの実態を把握しておく必要があるでしょう。


続き

 自転車は、「軽車両」(道路交通法2条11号)に当たります。

 自転車による事故は、交通事故に当たります。

そのため、自転車により、事故を起こした場合、法律上民事責任・刑事責任が発生します。

 

 会社が、従業員に対し、業務・通勤で、自転車の使用を、

明示または黙示[注:黙認しているという意味]に認めている場合、

会社に思わぬ責任が発生します。

1 自転車事故も交通事故同様の損害が発生 

  まず、自転車による事故も交通事故であることから、自動車による事故と同様に、

 治療費、通院交通費、休業損害、通院慰謝料、後遺症慰謝料、物損等の損害が発生します。

2 思わぬ高額慰謝料の発生

  神戸地裁平成25年7月4日判決は、

 当時小学5年生の男児が、当時62歳の女性に、自転車で正面衝突し、

 同女性が、植物状態となった事案において、約9500万円の損害賠償責任を認めました。

 自転車であっても、高スピードが出ることから、油断はできません。

3 自転車の場合、自動車に比して、保険の加入率が低い

  自動車事故の場合、

 自賠責保険が強制加入であり、また、任意保険の加入率が高いことから、

 事故による損害は、填補されることが多いです。

  これに対し、自転車事故の場合、

 自賠責保険の加入がなく、任意保険の加入率が低いことから、

 事故による損害は、自己負担となることがほとんどです。

  そのため、会社が、従業員に対し、業務・通勤で、自転車の使用を認めている場合、

 同従業員の自転車事故につき、会社が、

 事故による損害を全額負担しなければならないケースも発生し得るでしょう。

  先ほどの神戸地裁平成25年7月4日判決と同様、

 会社が、約9500万円の損害を、保険の填補なしに負担する可能性も皆無ではありません。

  会社が、このような多額の損害を全額負担しなければならないとすれば、

 経営に対する影響もかなり大きいといえます。

 

 あまり認識されていませんが、

自転車は、原則として、

歩道ではなく、車道の左側を通行しなければなりません(道路交通法17条1項本文、同条4項)。

自転車が、歩道を通行すること自体、違法なことが多いのです。

 

 以上の点を踏まえると、会社は、従業員に、業務・通勤で、自転車の使用を認める場合、

会社の義務と責任、従業員の義務と責任、従業員の順守事項等を、明確に規定し、

従業員の規定違反による自転車事故で、会社が責任を問われないようにしておくべきでしょう。

 自転車事故について疑問点がございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

 

 

 



映画「男はつらいよ」シリーズは、ご承知のとおり、全48作ございます。

映画「男はつらいよ」シリーズのとある作品で、メンタルヘルス等に罹患したサラリーマンの青年が鉄道に横たわり、

自殺を図るシーンがあります。

その鉄道を走る汽車は、すんでのところで止まり、その青年の命は、助かるのでした。

その青年は、たまたまその汽車に乗り合わせた「寅さん」と、その日、居酒屋に行き、後日、一緒にドイツのウイーンへ旅立ちます。

その結果、その青年のメンタルヘルス等は、すっかり癒えることになるのでした。

詳しい展開は、どうぞ、映画「男はつらいよ寅次郎心の旅路」をご覧下さい。シリーズ唯一海外が舞台となる、意外性のある作品です。

 

この青年のように、メンタルヘルスは、昨今重大な労働問題となっております。

従業員がメンタルヘルスになれば、会社において、作業効率の低下、生産量の低下、従業員の休職ひいては自殺等の労務管理上のリスク、が発生します。

 

会社は、従業員がメンタルヘルスにならないよう、労働時間を調整し、適宜社内教育等を取り入れることも検討しなければならないと思います。

また、平成27年12月より、常時50人以上を使用する事業者につき、年1回のストレスチェックを行うこと、が義務化されました。

国も、メンタルヘルス問題を重視しているといえます。

 

映画監督山田洋次さんは、「男はつらいよ」シリーズを通して、「労働の尊さ」、を伝えようとしていたと思います。

若輩ながら、メンタルヘルス対策を通じて、

今一度「労働の尊さ」を認識できるような社会を作る一助になれれば、と思い業務に当たっております。

 

従業員のメンタルヘルス問題、ストレスチェックにつき、お気軽にお問合せ下さい。




1 運送業者、営業部がある会社、地方都市にある会社等では、従業員に対し、社用車の使用を認めたり、マイカー通勤を認めたりするケース

 が多いです。

  このような会社では、社用車の使用及びマイカー通勤が避けられなケースが多いです。

  しかし、従業員に対し、社用車の使用及びマイカー通勤を認める場合、会社は、高いリスクを負うことを念頭に置かなければなりませ

 ん。

2 労災

  労災は、労働時間における社用車の使用はもちろん、通勤時にも発生します。

  そのため、マイカー通勤中も一定の要件(通勤起因性・通行起因性)のもと、労災が認定されます。

3 保険の等級

  会社が、従業員に社用車の使用を認める場合、ほとんどの場合、任意保険等に加入することと思います。

  しかしながら、社用車の使用につき、規定を整備、指導等を怠っていると、思わぬ従業員の交通事故により、任意保険の等級に影響が生じ

 ます。

4 交通事故そのものによる被害

  昨今、交通事故紛争の専門家・複雑化が進んでいます。

  当職の経験上、交通事故紛争で、後遺症の有無や程度に争いが生じた場合、基本的な医療文献(基本的な医療文献は事務所に置いてありま

 す。)にあたることは不可欠で、場合によっては、医師の論文等専門的な文献にあたったり、精密検査を提案したりすることもあります。

  また、交通事故そのものにより、治療費、付添費、交通費、装具器具購入費、休業損害、逸失利益、慰謝料等多岐に渡る損害が発生しま

 す。重い後遺症が残った場合、総損害額は、何千万になるケースもあります。

5 まとめ

  以上のとおり、従業員に対し、社用車の使用を認めたり、マイカー通勤を認めたりする場合、会社は、高いリスクを負っています。

  当事務所では、使用者責任における求償権の判例法理等も意識した具体的な提案を用意しております。

  お気軽にご相談下さい。


 従業員の、会社の指揮命令下におかれない私生活上の行為は、個人の自由に関わる問題であるため、従業員の私生活上の行為に、非行があったとしても、原則として、会社は、当該従業員に懲戒処分を下すことができません。

 そのため、会社の就業規則に、「従業員に私生活上の非行があった場合、会社は、当該従業員に対し、懲戒処分を下すことができる。」旨の規定があったとしても、直ちに、会社は、当該従業員に対し、懲戒処分を下すことはできません。

 

 会社が、従業員の私生活上の行為に、非行があった場合に、懲戒処分(程度を含む。)を下すことができるかは、ケースバイケースです。

例えば、運送業等の勤務するドライバーが、私生活上飲酒運転をし、傷害事件を起こした場合、会社は、当該従業員を懲戒解雇しやすいといえます。

 また、私生活上の犯罪行為に関しては、刑事手続上の結果も重要になります。不起訴処分になった場合や軽微な罰金刑に処された場合、直ちに、当該従業員を懲戒解雇することは難しいでしょう。

 

 従業員の私生活上の行為が問題となった場合、安易な懲戒処分(程度を含む。)は、後々、裁判になると厄介ですので、是非ご相談下さい。


機密情報は、その持ち出しにより、会社に大きな損害を与える可能性もあるので、

適切に管理しなければなりません。

 

では、従業員が機密情報を社外に持ち出した場合、

当該従業員を懲戒解雇することができるでしょうか?

 

答えは、タイトルにあるとおり、機密情報の社外への持ち出しのみでは、当該従業員を懲戒解雇することは難しいです。

従業員は、解雇権濫用法理のもと、労働法上手厚い保護を受けているため、よっぽどの事情がないと、いったん雇った

従業員を解雇することはできません。

 

懲戒解雇することができるかに当たっては、持ち出した情報の量や質等も考慮する必要があります。

また、会社の機密情報の管理体制が甘い場合、そのことが、

懲戒解雇を否定する1つの要素になりますので、注意して下さい。

 

会社は、機密情報につき、金庫に保管する等厳重に管理し、

くれぐれも机上等に放置したままにしないよう、注意して下さい。

 


タイムカードを導入している会社は多いと思います。

一見して、出退勤を管理できるので、非常に便利です。

 

しかし、定時に、従業員が、タイムカードを打刻していても、残業代が発生する場合があります。

 

<ケース1>

 従業員Aは、始業時間よりもかなり早めに出社し、社内で朝食をとっていました。

 使用者は、そのAが社内で朝食をとっていたのを黙認していました。

 しばらくして、使用者は、朝食をとりながら、PCを操作し始めました。

 使用者は、何かおかしいと思いながらも、かかるAを黙認していました。

 Aは、朝食をとりながら、取引先とのやりとりや社内メールへの応答をしていました。

 メールボックスにメールの日付時間はしっかり残っているので、会社は、

 賃金を支払っていないことの重要な証拠を残してしまっています。

 

<ケース2>

 従業員Bは、寡黙で、他の従業員との飲み会も断り続けています。

 しかし、Bの、通勤定期(ICカード)の履歴には、常に

 終業時間よりも遅い時間が記録されていました。

 Bの上司は、Bにタイムカードを終業時間に押させて、残業させて

 いたのです。

 

これらのケースの場合、タイムカードが定時に打刻されていても、未払賃金

が発生することがあります。

だらだら仕事をさせるのではなく、個々の従業員の労働の質を上げることが

大切です。

社内教育等も従業員の質を上げるのに重要です。

 

 


標記のタイトルですが、

従業員に対して、時給を支払う必要があるのでしょうか?

 

労働時間につき、

「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、

労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的

に決まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべき

ものではない」と判示されています(平成12.3.9)。

 

ポイントは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではないと

いう点で、かかる書面により、規定上、労働時間とされていなくても、労働時間に当たるとして、

時給を支払う必要がある場合も出てき得えます。

 

分かりにくいと思いますので、タイトルの「制服・作業着への着替え」を例にして、具体的に説明

しますと、執務時間中は、制服・作業着の着用が必須の場合[注:接客業の場合、特に注意]、制服

・作業着以外での執務ができないので、「制服・作業着への着替え」の時間も労働時間に当たり、

従業員に対し、時給を支払わなければならない可能性があります。

 

そこで、効率的に着替えの時間等に配慮する必要がある、と思われます。

 

また、企業・団体中の各種飲み会の、参加が強制される場合、労働時間に当たるとして、従業員に

対し、時給を支払わなければならない場合もあるので、経営者の方は、企業・団体中で各種飲み会

を開催あれる場合は、注意をしてみて下さい。

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